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マガジン
2025.01.22
不動産市場の動向と将来展望〜ヨーロッパ編〜
ヨーロッパの不動産市場は、金利環境の変化、サステナビリティ(持続可能性)への注目、そしてハイブリッドワークの定着を背景に、大きな転換期を迎えています。主要国・都市ごとに異なる変化が見られ、質の高い資産への投資が今後も注目されると予想されます。
ロンドンでは、ハイブリッドワークの普及によりオフィス市場が再編されています。グレードA(最上級クラス)のオフィスに需要が集中する一方、環境性能の低いビルは敬遠されつつあります。また、住宅市場では金利上昇の影響を受けつつも、住宅供給不足が続いており、郊外エリアへの需要シフトが加速しています。
ベルリンではスタートアップ企業の増加が、フランクフルトでは金融セクターの影響が、ミュンヘンではテック企業の進出がそれぞれ市場を牽引しています。しかし全国的に、手頃な価格帯の住宅供給が不足しており、建設コストの上昇やエネルギー効率基準の強化が課題となっています。
パリ市場は2024年オリンピック後の再開発や「グラン・パリ計画」によって変化が予想されます。高級住宅市場は安定していますが、注目されるのはリヨンやボルドーといった地方都市。テレワーク定着に伴い、移住需要が高まり、不動産投資先としての存在感を増しています。
不動産業界でもESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れが加速しており、グリーンビルディングやサステナブル認証の重要性が高まっています。さらに、プロパティテック(PropTech)やスマートビルディング、デジタル取引プラットフォームの導入が進み、不動産の管理・運用にも変革が起きています。
コア資産への集中や、セクター分散を意識したポートフォリオ構築が進んでいます。リスク評価も厳格化され、クロスボーダー投資では特にアジア資本の動向が注目されています。今後は都市再生や代替アセット、テクノロジー活用による新たな投資機会が広がるでしょう。
インフレや金利上昇、建設コストの増大は大きな課題です。一方で、都市再生プロジェクトやサステナブル不動産の需要拡大は中長期的な成長機会といえます。
ヨーロッパの不動産市場は、サステナビリティとデジタル化を軸にした大きな変革期を迎えています。市場の二極化が進むなかで、今後も質の高い資産への投資需要は継続し、選別と再構築の時代へと突入しています。